激情
ジャック・ヴィルヌーヴがなんで好きなのか。人によく聞かれる。
クレバーだから?プライドが高いから? もちろんそういうとこも好き。
でもね、時に見せる爆発的な感情が大好きなんだよ。そう、時にいきなり爆発させるんだ。
自分がいくら変なマシンに乗ってても、負けたくない、絶対に譲れないときに
全てのリスクを、一瞬の感情にかけていく。年に3,4回くらいは見ることができる。
結果、いいときもあれば、悪いときもある。まぁ、半々くらいってところか。
いつもは、さらっとしてて、世間を一歩はなれたところから見つめてる感じ。で、淡々とシートにおさまる。
死ぬかもしれないのに。親父はそうして死んだ。伝説のフェラーリドライバー、ジル・ヴィルヌーヴ。
ジルの影響をレース人生のほとんどで、受けてきてるはず。常にジルの息子として生きてきたはず。
その中で、周りの雑音をシャットアウトすることが彼には必要だったんだと思う。
だからこそ、パドックではいつも淡々としたジャックを見せることが必要になったんだと思う。
でも、ステアリングを握って、スロットルを開けちゃったら、もう抑えられない。
絶対に退けない時。マシンの動きを通じて、彼の感情がはっきり伝わるんだ。
映画とか見ても泣かないんだけど、2000年のモントリオールでは何故か涙が出た。
非力なBARがフェラーリの前を張る。抜かれない。抜かさない。今でも、ビデオを見ることがある。
心の芯から、僕を震えさせてくれた、そして最高に尊敬している、唯一の人物。
いや、唯一の親子って言えるのかな。皮肉にも、その激情はヴィルヌーヴ親子のものだから。
明日、カタロニアでザウバーを駆るジャックのことを思ってくどくどと書いてしまった。